公益財団法人 平戸市振興公社

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 生月学講座No.195「「違い」こそが観光の要点」

生月学講座:「違い」こそが観光の要点

 調査などで他の地域に行く時、私はできるだけ土地の名所を巡り、名物料理を食べるようにしています。そうした事がその土地を知る一助になると思うからですが、同時にそれは、自分が暮らす場所の違いを認識する事にも繋がるからです。
 観光というのは「自分が日常を送る場所から離れる事で、心を日常から切り離してギャップを生じさせ、刺激や解放感を得る行為」だと言えます。その切り離しのためには、日常と「違う」という事が何より重要で、もしあまり違わないのであれば、心にギャップは生じず、わざわざそこに出かける意味も価値も無い事になります。
 「違い」というのが具体的に何かというと、一つは「独自の存在」という場合です。他に無いものがそこにあるとすれば、わざわざ見るだけ価値がある「違い」がそこに在る訳です。例えば生月島のかくれキリシタン信仰など、他の地域には殆ど無いのですから、充分に独自の価値を有していると思います。また仮に他所に同じようなものがある場合でも、顕著な特徴があったり、その中で何かしら一番になるようなものなどは、やはり違いになります。例えば生月島の鯨組「益冨組」など、同様の鯨組は日本各地にある訳ですが、その中で日本最大規模の鯨組だという点で、違いの価値を有していると言えます。
 観光では、こうした「違い」をいかに演出するかが重要なのですが、困ったことに行政においては、失敗しないために前歴主義や横並び主義が強く働き、既存のものと同じようなものを作ろうとする習性があるため、観光で必要な「違い」の提示が難しい所があります。例えば地域の歴史を紹介する歴史民俗資料館など、どこでも歴史年表通りにコーナーを作って資料を並べるため見た目の印象が変わらない所が多く、明らかに前歴踏襲主義の弊害です。作った方はおかしいと感じていない場合が多いのですが、地域についての共通認識を広めるために施設を多くの人に見て貰うという目的からすると、明らかに失敗です。
 また行政のそうした弱点を理解してか、最初からコンサルなど外部の者に任せるという選択をする場合もあります。外部者のスキルや情報に期待できる点で一見良さそうに思えますが、基本的なパターンの表層だけをその土地に付け替えた程度のものである場合も多く(企業側の費用対効果を考えた場合、それが最もリーズナブル)、後はより多くお金を出す事で規模を拡大するといった形での違いの出し方になる場合が多いようです。
「違い」を演出するためには、自分が暮らす場所のどこに外部者が違いを感じるのかを、知る事が肝要です。そのためには自分が暮らす場所の事を詳しく知る事が何よりも重要で、そこにこそ博物館や文化財行政の真のポテンシャルがあるように思うのですが、同時に、外の事をよく知って、そこに無いもので地元にあるものに気付く事が出来れば、外の人が求める違いをより上手く演出できるのではないかと思います。
田舎では、都会に近づける事で周囲に対して優越感を持とうとする意識が往々にして働きがちです。しかし都会から来た人から見ると、それは自分達の日常にあるもののチープなレプリカに過ぎず、違いを生じる魅力に欠けたものに過ぎない場合が多いのです。今や超有名温泉地になった黒川も、数十年前には戦後各地にありがちの温泉街で寂れかけていました。しかし宿の周りに雑木林を植えたり岩風呂を整備して、都会とは真逆の、鄙びた野趣あふれる「違い」の空間を作った事で、多くの人が来るようになったのです。(2019.10)