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 生月学講座 No.025「マンボウ」

 正月過ぎに舘浦漁協のお魚市場に立ち寄ってみると、様々な魚と一緒にマンボウの様々な部位が売られていて、珍しい軟骨まであるのには驚きました。何でもこの冬はマンボウが毎日のように定置網に入っているそうで、成る程、正月のかくれキリシタンの行事調査の時も、普段の正月よりも宴席にマンボウ料理が目に付いたなあと思い返していました。
 マンボウは硬骨魚類・フグ目・マンボウ科に属し、大きいものは全長3㍍にもなり、突き出た背鰭と腹鰭を持ち尾鰭は極端に短いうえに、縦長で左右に平たい特異な形の海水魚です。全世界の暖かい海に分布していますが、日本の沿岸部でも、食べるところと食べないところがはっきり分かれており、昔から、茨城県沿岸部や和歌山県熊野地方で食べられており、西海では、生月島や佐賀県の呼子で食べられていました。しかし五島や平戸島では食べられていなかったようです。
 生月島では冬を中心に定置網などで取れる他、まき網船が沖で捕獲したものを持ち帰る事もあり、ふつうは年間で凡そ二百匹ほどが消費されていると推定されます。特に生月漁協が行っている配給制は、全国的にみてもユニークな制度で、組合員である壱部浦などの住民に班単位で卸しています。マンボウが入ると、順番にあたった班の軒数分のビニール袋に解体した身・皮・百尋などを入れ番号を振ります。各家の人はくじを引いてその番号の袋を買い取り、一定金額の代金を班長さんが徴収して漁協に納めているそうです。
マンボウの解体は、まず背鰭と腹鰭、尾の部分を切り落とし、鰭の根元にある軟骨を取ります。つぎに上側の皮を切り取って、内臓を露出させ、ユと呼ばれる胆嚢を取り去ります。ユに入っている液は苦く、うっかり崩してしまうと全部食べられなくなってしまうそうです。次に腸など内臓を取り、反対側の皮を切って解体を終えます。解体には長い柄のついた包丁を使いますが、鯨を捌いていた長柄包丁を、使いやすいように柄を1㍍程に短くしたものが使われています。
多く食べられるのは皮身で、適度に湯がいて冷ますと白い半透明のゼラチン状となり、醤油につけて食べますが、食感はさておき味はあまり無く醤油を食べているようだと言われ、また湯がき過ぎると溶けて無くなってしまうので経験がいるそうです。人気があるのは赤身で、新鮮なものは生でも食べますが、湯がくと鳥の笹身をさらに淡白にしたような味と触感で、やはり醤油で食べます。最も人気があるのは百尋(腸)で、湯がいたものを醤油で食べますが、淡白ですが歯ごたえがあります。希少価値のある珍味として軟骨があり、湯がいて半透明になったものを味噌漬などにして食べます。エビノミとは卵巣の事ですが、湯がいたものはとても美味だそうです。心臓も新鮮だと生で食べられます。
舘浦の柴田市平さんから伺った笑い話ですが、まき網船である時マンボウが取れたので、飯炊きさんに渡しておいたところ、皮身だけが出てきました。「赤身や百尋はどうしたのか」と聞くと「捨てた」。昔、マンボウは壱部の方から売りに来ていましたが、先に壱部の方で赤身や百尋が売れてしまうので、舘浦に着く頃にはいつも皮身だけになっていました。それでその飯炊きさんは、マンボウで食べられるのは皮身だけだと思っていたのだそうです。